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【修の呟き日記(2016.0814)=佐賀空港へのオスプレイ配備問題を考える】
オスプレイの佐賀市・佐賀空港への配備問題を考えたい。佐賀空港へのオスプレイ配備計画とは、国の中期防衛整備計画に基づき、防衛省が陸上自衛隊に2018年度から納入される新型輸送機オスプレイ17機と目達原駐屯地(佐賀県神埼郡吉野ヶ里町)のヘリ部隊約50機を佐賀空港に配備し、空港西側に約33㌶に駐機場や格納庫、弾薬庫、隊庁舎を造り、隊員700~800人規模の駐屯地を整備する計画。防衛省は米軍との共用について否定していない。
オスプレイは諸経費を含めると1機当たり211億円だ。ステルス戦闘機F35Aは1機当たり202億円で、最新型ボーイング787は約200億円だ。大型輸送ヘリCH47は兵員55人を乗せられ、大型貨物や車両も運べて米国で約42億円。オスプレイは兵員24人しか乗せられず、貨物室が狭いため車両は積めない。
それでもオスプレイが割高なのは試作機の事故が相次ぎ、開発から米軍への配備開始まで約20年もかかったためといわれる。このため米陸軍は採用せず、海兵隊も一時採用を拒否したが、米議会の圧力で採用することになったようだ。またイスラエルが購入する予定だったが中止になった。費用対効果が悪すぎるオスプレイは量産で価格を下げることが求められ、日本の大量発注が期待された。
オスプレイの航続距離は3900キロで、唯一のメリット。「専守防衛」の日本にはもちろん必要ない輸送機だ。元朝日新聞編集委員の山田厚史氏は「航続距離が長いオスプレイを自衛隊が導入するのも『下請け化』の一環だろう。日本が17機を配備すれば、米国の負担は減る。高い金を払って米国で教育を受け、米国のオペレーションに組み入れられる。もともと米軍の駐留経費は日本政府が思いやり予算で面倒を見てきた。これからは兵員と装備まで差し出す」(山田厚史の「世界かわら版」、2015年9月10日)ことになり、米国従属が一層強まると指摘をしている。防衛省が配備の理由に挙げている中国を想定した「島しょう防衛」は「軍拡のジレンマ」にはまり、一触即発の危険性が増すと「島しょう防衛」に否定的だ。
また軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は「もし中国軍が尖閣諸島を占領し、自衛隊がそれを奪還するのに成功したとしても、…戦争がそれで終わる可能性は低い。(中国は)政権の存続に関わるから、尖閣諸島だけでなく日本側の策源地である那覇空港や那覇港、佐世保港や九州の航空基地等への航空攻撃、巡航ミサイルなどによる攻撃も考えておかねばならない」(「岡田俊次の戦略 目からウロコ」2015年9月3日)という。「島しょう防衛」に伴う佐賀空港攻撃を考える必要がある。佐賀には玄海原発もある。攻撃を受ければ被害は甚大だ。
防衛省はオスプレイの安全性を強調する。海兵隊所属の全航空機の平均事故率2.45よりMV22オスプレイは1.93と低いという資料(2012年9月)が根拠となっている。その数字にはトリックがある。「クラスA」の事故の評価基準が、2009年に「被害額100万ドル以上」から「200万ドル以上」に引き上げられた。旧基準を使って算定するとMV22オスプレイの事故率は3.98になる。また事故率13.47の空軍仕様のCV22オスプレイは除外されている。
米国防研究所(IDA)の元主任分析官でオスプレイの専門家、レックス・リボロ氏は米海軍安全センターがまとめたアフガニスタンにおける米海兵隊航空機の事故報告書について沖縄タイムスの取材に対し、「現地でのオスプレイの利用率の低さと事故率の高さは驚異的に恥ずべき数字だ。実戦で使い物にならなかったことを立証している」と述べている。同報告書によると、2010~2012米会計年度にアフガニスタンに配備した航空機12機種のうち、ヘリ機能を持つ6機種のなかで、MV22オスプレイの運用率が1.02%と極端に低く、ほとんど使われなかったという。全12機種のクラスA~Dの事故率(10万飛行時間当たり)は26.69で、3746.8時間に1件の割合で発生。これに対しオスプレイの事故率は1105.56で、全機種平均に対し約41倍、90.4時間に1件の割合で発生している。クラスAの事故率は138.19で、12機種平均に対し21倍、ヘリ機能を持つ6機種の平均に対し30倍となっているという。防衛省の安全性がいかにまやかしかが分かる。
以上のことから佐賀市・佐賀空港の軍事基地化とオスプレイ配備が「専守防衛」に基づく日本側の必要性に基づくものでなく、米国の要請に基づく米軍従属の一層の強化のためのものであることが分かる。防衛省は沖縄の負担軽減のためという。しかし、基地返還の見返りに新基地が建設され一層強化され、「平成の琉球処分」が公然と行われている現状をみると、沖縄県民の負担が一層重くなりとても負担軽減とはいえない。
地元経済効果もごく僅かな土建業者のみ受けるだけだ。むしろ漁場や水田は荒らされ、オスプレイによる風圧や騒音、振動、排ガスのため町の環境は壊され、基地特有の犯罪が増え町の安全が危機にさらされる。米首都ワシントン近郊のヴァージニア州で、MV22オスプレイによる騒音や振動に関する住民の苦情が増加しているのを受け、2017米会計年度米国坊権限法案の下院案に、米軍用機による飛行訓練時の飛行経路や高度を調査し、違反が認められた場合は飛行経路の変更を含めた是正措置の検討を義務付ける条項が盛り込まれたという。このことからもオスプレイの騒音や振動がいかにひどいものか想像ができる。風圧では災害現場や住宅地で離発着時にけが人がでるなど被害が報告されている。
元NHK記者の柳原忠行さんは近未来小説「近未来の風景―オスプレイが飛ぶ日―」(佐賀文学 第33号)で、米兵による女子中学生乱暴事件を取り上げ、オスプレイによる風圧でノリ養殖用網や支柱が被害にさらされる様子などを描いている。そんな日が来ないことを祈りたい。
防衛省の説明で詐欺だと思われるのが造成面積の広さだ。3月に藤丸敏政務官が佐賀市で開かれた講演会で、佐賀県が条例で定めている環境影響評価(アセスメント)の手間やコストを避けるため、当初はアセスの対象から外れる35㌶未満にとどめ、残りは後から買うという「秘策」を披露した。防衛省は「秘策」通り、約33㌶の造成面積を見込んでいる。格納庫や隊庁舎、燃料タンク、弾薬庫が隙間なく詰め込まれ、一般車両や人が行き交う道路沿いに燃料タンクや弾薬庫を配置するという異常な見取り図になっている。いずれ基地拡張を前提にしたものだ。これは詐欺以外なんでもない。
詐欺行為はこれ以外にもある。佐賀空港建設時に佐賀県と地元との間で「自衛隊と共用しない」との協定があったにもかかわらず、これを無視して軍事基地化をすすめようとしていることも一つだ。成田空港建設時も軍事基地化が危惧され大きな反対運動が起きた。佐賀空港でも危惧され、その歯止めのために協定が結ばれた。切実な住民の想いを裏切る行為で、許されない。
諫早湾干拓事業の際も、有明海への影響はないと農水省は明言していた。しかし潮受け堤防が閉鎖されるとノリ養殖が不振となり、漁船漁業が深刻な不漁になった。このため漁民が潮受け堤防を開けて原因を調べてほしいと訴訟を起こし、福岡高裁で開門調査を命じる判決が確定した。しかし、国は三権分立を無視して確定判決に従わないどころか、カネで解決を図るという欺瞞的な対応を示している。
この状況から防衛省や農水省など国に裏切られ続ける地元住民が国の要請に応えられるはずがない。佐賀新聞が実施した参院選に関する世論調査で、佐賀空港へのオスプレイ配備計画に関しては賛否がほぼ拮抗していたが、オスプレイの佐賀空港配備が国の必要性から「専守防衛」に役立つのなら真摯に応える議論をすべきだと思う。しかし米軍との共用が前提であり、以上の観点から本来の国の必要性から決定されたものと思えず、佐賀市民として地域の環境、安全、安心を守るため佐賀空港の軍事基地化とオスプレイ配備には反対せざるをえないという結論に導かれるだろう。