「原発1年分の放射能を1日で出す」核燃料再処理工場

九州北部の梅雨も開け、好天ともいえないまあまあのお天気の中で、佐賀県庁横、くすの栄橋での7月最後の金曜行動には7人が参加しました。冒頭、共産党の武藤明美県議がアピールを行い、途中3人がマイクを握り、最後に市民共同の山下明子佐賀市議のアピールで締めました。今日はコロなの影響なのでしょうか、橋を行き来する人が少なかったように思います。今日の私は六ヶ所村の核燃料再処理工場の危険性を訴える原稿を読み上げ、アピールしました。(写真を撮り忘れたため、別の日の写真を掲載しました)
原子力規制委員会は29日、全国の原発から集めた使用済み核燃料を硝酸などで化学処理し、再利用できるプルトニウムとウランを取り出し、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料など核燃料を再生する施設、日本原燃の青森県六ヶ所村の「再処理工場」について、国の新規制基準を満たしたとする審査書を正式に決定しました。
再処理工場は、政府が進める使用済み核燃料の中にあるプルトニウムを再び原子力発電で再利用する「核燃料サイクル政策」の重要施設です。しかし、プルトニウム利用を進める「核燃料サイクル政策」は、本命だった高速増殖炉「もんじゅ」の廃止決定で既に破綻しています。また、プルトニウムは核兵器の原料になるため、必要量以上の保有は許されません。このため政府は、プルトニウムを消費するため「もんじゅ」に代わり一般の原発でプルトニウムを消費するプルサーマル計画を推進しています。でも現在、プルサーマルを実施しているのは玄海原発3号機など4基のみです。
2011年3月11日の東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働が難航し、電力供給における原発の割合は格段に小さくなっています。新規の立地も難しく、今後、古い発電所が廃炉になるにつれて原発の存在感は薄れていくでしょう。近い将来、大事故の不安をなくすため、脱原発を実現しなければなりません。このように原発が先細りする時代に、「核燃料サイクル」の意義は乏しく、現に先進国の多くは、経済性がないとして早くに再処理から撤退しています。
意見公募では国の核燃料サイクルを疑問視する意見など約750件が寄せられました。しかし意見を踏まえた判断修正は全くありません。原子力規制委員会が以上のような状況を全く無視し、「核燃料サイクル政策」を推進する立場で建設の必要性もなく、極めて危険な再処理工場の審査書を決定したことは納得できません。
日本では東京電力福島第1原発事故前、54基の原子力発電所が運転していました。原発で発電を終えた核燃料(使用済み燃料)には燃え残りのウラン、プルトニウム、そして「死の灰(核分裂生成物)」が含まれています。日本政府や電力会社は、この使用済み燃料の中にあるプルトニウムを再び原子力発電で再利用する「核燃料サイクル」を、原子力政策の基本としています。そのため使用済み燃料からプルトニウムを取りだすための施設、核燃料再処理工場を青森県六ヶ所村に建設中です。プルトニウムは使用済み燃料に約1%含まれています。六カ所再処理工場は1年間で約800トンの使用済み燃料を処理し、約8トンものプルトニウムを分離します。
六ヶ所村には再処理工場も含めて核燃料サイクル基地と呼ばれる4つの各施設があります。一つ目は天然のウランを濃縮する施設「ウラン濃縮工場」です。天然のウランは約99・3%の核分裂しにくいウラン、約0・7%の核分裂を起こしやすいウランでできています。この核分裂しやすいウランを約4~5%に濃度を高めた濃縮ウランをつくり出す施設です。二つ目は、原発の運転によって発生する低レベル廃棄物(黄色いドラム缶など)を埋め捨てて最終処分する施設「低レベル放射性廃棄物埋設センター」です。三つ目は、フランスやイギリスに委託した海外再処理(全体で約7100トン)によって発生した廃棄物を一時的に貯蔵する施設「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」です。現在はフランスから日本に返還輸送された高レベルガラス固化体を保管しています。
再処理工場は工程ごとに建屋があります。各原発から運び込まれた使用済み核燃料を貯蔵してから、切り刻んで硝酸で溶かします。その後、再利用できるプルトニウムとウランを分離し、精製して再利用できるプルトニウムを取りだします。さらに、分離の際に生じる高レベルの放射性廃液をガラスで固めて「核のゴミ」と呼ばれるガラス固化体にする処理も必要で、そのための建屋もあります。使用済み核燃料を使った試験運転では、廃液漏れやガラス固化の中断やトラブルが多発しました。
このように放射能を原料とした巨大な化学プラントですから、核施設として臨界事故、放射能漏れ、被ばく事故などの危険性と、化学工場として火災・爆発事故などの危険性を合わせ持ちます。再処理工程全体でたとえ事故が起きなくても、「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれるほど、大量の放射能が環境中へ放出されます。またひとたび大事故が起これば、放射能の被害は日本全体におよぶ可能性があります。
再処理工場が本格的に運転を始めると、大量の放射能は高さ150メートルの巨大な排気筒から、クリプトンをはじめとしてトリチウム、ヨウ素、炭素などの気体状放射能が大気中に放出されます。国は、これらの放射能が「空気によって拡散するので問題ない」といっています。また六ヶ所村沖合3キロメートルの海洋放出管の放出口からは、トリチウム、ヨウ素、コバルト、ストロンチウム、セシウム、プルトニウムなど、あらゆる種類の放射能が廃液に混ざって海に捨てられます。これについても国や日本原燃は「大量の海水によって希釈されるので安全」と説明しています。当初計画ではクリプトンとトリチウムの除去が計画されていましたが、経済的な理由から放棄され全量が放出されます。とんでもない話と思いませんか。
再処理工場は、このように危険な放射能を垂れ流す最悪の核施設です。ヨーロッパでは、再処理工場周辺にまき散らされたプルトニウムなどの放射能が、鳥や魚、植物、そして人体からも確認されています。フランスのラ・アーク再処理工場周辺では、小児白血病の発症率がフランス平均の約3倍にのぼるというレポートが発表され、再処理工場の運転や放射能放出を規制する動きが出ています。イギリスのセラフィールド再処理工場からの放射能によって汚染されたアイリッシュ海をめぐっては、対岸のアイルランド政府がイギリス政府を訴える事態に発展しています。ヨーロッパ西部の多くの国の政府は、これ以上の放射能汚染を防ぐために英・仏の再処理工場の運転を停止するよう求めています。青森県でも六ヶ所再処理工場周辺での環境汚染および人体への影響が懸念され、1999年から「青森県小児がん等のがん調査」が実施されています。
六カ所再処理工場は1993年の着工以来、これまで相次ぐトラブルや設計ミスなどで完工が24回も延期され、いまだに完工していません。再処理工場は、日常的な放射能汚染に加えて、人が近づけないような高レベル廃液を生み出し、重大事故により、破局的な放射能汚染をももたらしかねません。その上、「もんじゅ」は廃炉が決まり、「核燃料サイクル」は破綻、国際的にも日本のプルトニウム保有に厳しい批判がある中、約14兆円もの巨費を投じてまで再処理工場を動かす意味は完全に失われています。何よりも一刻も早い脱原発の実現を求める多くの人びとの願いを踏みにじるものです。私は、今回の許可処分に抗議するとともに、改めて再処理工場の許可の取り消しと再処理事業からの撤退を求めます。