453回目(30日)の佐賀県庁横、くすの栄橋での金曜行動では老朽原発の再稼働問題を訴え



453回目(30日)の佐賀県庁横、くすの栄橋での金曜行動には共産党県議の武藤明美さんをはじめ6人が参加しました。今日のスピーカーはそれぞれ老朽原発の40年ルールを破って再稼働させるという問題について訴えました。私も老朽原発問題について発言しました。私の原稿は少し長めですが、下記の通りです。
過酷事故を起こした東京電力福島第1原発周辺には放射性物質で汚染された無人の地が広がっています。そして今も3万5千人以上の人々が避難しています。そして「もう戻れない」と諦める住民が増えています。これが原発事故10年目の状況です。かつて電力会社や政府は「日本では大事故は起きない」と言っていました。今、大きすぎる破壊と汚染を前に、私たちは立ちすくんでいます。
時間が経つにつれ事故の実相が、少しずつですが分かってきました。事故では放射性物質が充満した格納容器が爆発寸前でした。爆発していれば、汚染で住めなくなる東日本と、住むことができる北海道や西日本の3地域に分断されるという、日本を崖っぷちに立たせる事故でした。
このため東京電力の元会長ら3人が裁判で刑事責任を問われています。3人は大地震の前に社内会議で、担当者から「高さ15メートルの津波が来る可能性がある」と明確に指摘されていたにもかかわらず、裁判では「私は十分に理解していなかった」とか、「津波は想定外の規模だった」と繰り返しました。自分たちがつくり、安全をPRしてきた施設がこれだけの事故を起こしても、日本はだれも責任をとらない社会であることが浮き彫りにされました。
福島第1原発では廃炉作業の真っ最中です。鉄骨が露出し、建屋に作業用の設備が取り付けられています。トリチウムを含んだ放射性物質が入ったタンク約1千基が密集しています。しかし、肝心の、原子炉3基の炉心溶融で溶け落ちた核燃料デブリの取り出しのめどが立っていません。核燃料デブリを冷やした放射性汚染水は海に放水し、世界の海を放射能で埋め尽くそうとしています。
「未来のエネルギー」と期待された原子力を止めたのは、二つの大事故でした。一つ目の、1986年のチェルノブイリ原発事故では、原子炉1基が炉心溶融し、原子炉のふたを吹き飛ばして福島第1原発事故より多くの放射性物質を放出しました。事故後、ヨーロッパで反原発運動が広がり、右肩上がりだった世界の原発総数が90年代以降は横ばいになりました。
二つ目の大事故は2011年の福島第1原発事故です。世界の原子力産業の斜陽化がいっそう進み、一方で、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの急伸を後押ししました。ドイツでは、「技術先進国の日本でさえ大事故が起きた」ことに衝撃を受け、2022年までに全原発を止める脱原発と、再生可能エネルギー推進を決めました。理由は、「原発事故はいざ起きると大災害になる。原発はしょせん発電の手段であり、手段は再エネなど他にもある」と分かりやすいものです。スイスや台湾も時間をかけて脱原発をすすめていくことを決めています。
菅首相は2030年度温室効果ガス排出量を2013年度比で26%減らす従来目標を改め、46%減を目指すと表明しました。国内のCO2排出量は電力部門が約4割を占めており、目標の達成には石炭火力発電所の全廃が不可欠です。ところが菅政権は石炭火力に固執し、新増設まで図っています。石炭火力発電所の輸出支援でも、すでに決定した計画をやめようとしません。これで目標が達成できるのでしょうか。
経済産業省は中期的な指針「エネルギー基本計画」の改定に伴い2030年度の電源構成目標について再生可能エネルギー比率を現行の20%台から30%以上に増やし、原子力は20%程度の目標に据え置く見通しだと、一部報道が伝えています。
福島第1原発事故の前、日本には54基の原発があり、発電の25%ほどを担っていました。事故で原発稼働への反発が強まり、これまで21基の廃炉が決まり、再稼働は9基に過ぎません。この結果、2019年度の原発による発電量は6%しかありませんでした。一方、再生可能エネルギーは水力を含めて18%で、日本は事故後の10年を現実的には「ほぼ原発なし」で過ごしてきました。
こうした中で見逃せないのが、脱炭素の電源として原発頼みが加速していることです。自民党内で原発推進派の動きが活発化し、経済界や電気事業連合会などが原子力の推進を目指しています。運転開始から40年を超える関西電力の老朽原発3基について、立地する福井県の杉本達治知事が28日、再稼働に同意すると表明しました。全国で廃炉が決まった原発を除き、他に計5基が5年以内に運転40年を迎えます。このうち鹿児島県の川内原発1、2号機について九州電力は28日、40年超の運手延長に向けた検討に入ったと発表しました。老朽原発の再稼働は極めて危険です。やめるべきです。
原子炉の炉心を収める圧力容器は、運転中に核燃料が放つ放射線の一種、中性子線を浴びると劣化が進みます。このため老朽原発の再稼働は、福島第1原発事故を教訓に設計や設備が古い原発を順次廃止し、少しでも危険性を減らそうとした40年ルールが導入されました。「脱炭素」を口実に40年ルールが骨抜きにされようとしています。
また閣議決定している「エネルギー基本計画」に定める原発政策は「可能な限り原発依存度を低減する」とされています。菅政権や自民党の原発政策は安心安全を求める国民の声を無視し、これまでの流れに逆らうものです。
福島第1原発事故の経験を踏まえ、世界の潮流をみれば、原発推進など許されるはずがなく、懸命な判断が必要です。原発の姿はこの10年で大きく変わりました。もう「大事故は起きない」とは言えず、自己への責任もあいまい、発電コストも高くなるなど、信頼感や確実性が失われました。
東京電力福島原発事故に全く反省のない原発固執は国民の願いと相いれません。再生可能エネルギーの飛躍的普及と省エネで脱炭素の流れを促進する道に踏み出すべきです。
(小中学生向けニュース月刊紙「ジュニアエラ」4月号から一部引用しました)