世界平和アピール七人委員会
世界平和アピール七人委員会
http://worldpeace7.jp/modules/pico/index.php?content_id=132
「特定秘密保護法案」の廃案を求める
アピール WP7 No. 110J
2013年11月25日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野
池田香代子 小沼通二 池内了 辻井喬
私たち世界平和アピール七人委員会は、政府が今国会に提出している「特定秘密保
護法案」は、その内容も審議の進め方も、民主主義と日本国憲法にとっての脅威であ
ると危惧し、本法案を廃案とすることを求めます。
民主主義は、主権者である私たちが政策の可否を判断できて初めて成立します。市
民の知る権利は、その不可欠の前提です。私たちは、麻生内閣のもとで成立した「公
文書等の管理に関する法律」(公文書管理法(注1)、2009年7月1日施行)におい
て、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者で
ある国民が主体的に利用し得るものである」と位置づけられていることを高く評価し
ます。
私たちは、国家が直ちには公開できない情報を有することを理解します。ただし、
政府は秘密の指定が適切であることを説明する義務を負うものと考えます。しかし本
法案には、指定の妥当性を客観的な立場から検証判断する、政府から独立した第三者
機関の設置は想定されていません。首相が第三者機関の役割を果たすことができない
ことは自明です。
国家の秘密は期限を定め、期限がきたものは、たとえ政府にとってマイナスであっ
ても、歴史の検証にゆだね、政府に説明責任を果たさせ、その後の政策に役立たせる
ため、すべて公開すべきであると考えます。
そのためには、指定解除前に関連文書が廃棄されることがないよう、保管が義務付
けられなければなりません。沖縄返還をめぐる日米密約は、文書がきちんと保管され
ず、大臣や政権の交代に際しては、口頭ですら引き継ぎが行われず、著しく国益を損
ねて今日に至っています。国家秘密の保管と例外なき開示を政府に義務づけない本法
案は、こうした恣意性を追認するものであり、とうてい容認できません。
本法案は、安全保障、外交、諜報の防止とテロ対策に関する情報など、特定秘密に
指定できる領域を広く定めています。これはただちに、裁判や国会審議の公開性や、
国会議員の国政調査権の制限を招きます。
また本法案では、研究者や政策提言組織、市民団体などの情報アクセス権が保証さ
れていません。私たちは、時の政権の都合により、情報アクセスや表現の自由への制
限が強まることを危惧します。のみならず、戦前の治安維持法の場合と同様、市民の
側の萎縮を助長し、自由な情報の交換や闊達な議論をはばかる風潮が広がる危険性が
少なくないと考えます。
人権侵害に関する政府の秘密は、秘密取扱者にむしろ通報の権利と義務がある、と
するのが世界の趨勢です。しかし本法案では、政府の違法行為にかかわる情報、政府
が違法に秘密指定している情報、あるいは公益に資すると認められるにもかかわらず
政府が秘密指定している情報などを公表した内部通報者やジャーナリストなどの保護
が保証されていないことは、きわめて問題です。
特定秘密取扱者の適性評価項目には、精神疾患・飲酒・経済状況などのほか、配偶
者とその父母の国籍や元国籍なども含まれます。約6万5千人ともいわれる当該公務
員だけでなく、官公庁と業務関係のある企業に勤める民間人まで含めて、広範な個人
情報を国家が掌握し、家族の国籍や元国籍によって本人の処遇に差をつけることは、
憲法に定められた法のもとの平等に抵触することは明らかであり、私たちは懸念を表
明せざるを得ません。
さらに本法案は、外国に特定秘密を提供できるとしています。具体的には、アメリ
カ合衆国への機密情報供与が想定されていることは明らかです。国家安全保障会議創
設や集団的自衛権容認へと向かう現政府の動きを勘案すると、この規定は、核抑止を
基本とする米国のグローバル戦略のなかにわが国を組み込むものであり、交戦権を放
棄した憲法にも、国連の場で核兵器廃絶を支持しているわが国の方針にも、もとるも
のです。
安全保障と市民の知る権利は、とくに2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、各
国がその均衡に苦慮してきました。「国家安全保障と情報への権利に関する国際原
則」(ツワネ原則)(注2)は、世界の経験と英知の結集から生まれ、かつわが国も
締結している国際人権規約にのっとったものであり、私たちはきわめて妥当であると
考えます。
とりわけ、「ツワネ原則」が秘密指定してはならない領域として、国際人権法や人
道法に違反すること、公衆衛生に関することなどを提案していることは重要です。こ
れは、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の拡散について、とくに
初期の情報開示が充分ではなかったという痛恨の経験をした私たちにとり、切実さを
もって理解できるものです。
かつて歩いた誤った道を、再び歩むことがあってはなりません。民主主義と相矛盾
する本法案を廃案としたうえで、安全保障と市民の知る権利のバランスについてさら
なる社会的な議論を深め、国会においても、性急な多数決に走ることなく、後世に悔
いを残すことのないよう、野党の提案も真摯に審議し、取り入れるべきは謙虚に取り
入れ、多くの市民が納得する方策を見出すことを、市民、政府、国会議員に呼びかけ
ます。
注1 公文書管理法憲章
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO066.html
注2 ツワネ(Tshwane)原則 70カ国以上の500人を超える人権と安全保障の専門家
の2年以上、10回以上の議論を経て、22の団体によって起草され、2013年6月12日に
発表された。ツワネは、最終会議が開かれた南アフリカ共和国の都市である。
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/statement/data/2013/tshwane.pdf
連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp
ファクス:045-891-8386
*世界平和アピール七人委員会
http://worldpeace7.jp/modules/pico/index.php?content_id=132
http://worldpeace7.jp/modules/pico/index.php?content_id=132
「特定秘密保護法案」の廃案を求める
アピール WP7 No. 110J
2013年11月25日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野
池田香代子 小沼通二 池内了 辻井喬
私たち世界平和アピール七人委員会は、政府が今国会に提出している「特定秘密保
護法案」は、その内容も審議の進め方も、民主主義と日本国憲法にとっての脅威であ
ると危惧し、本法案を廃案とすることを求めます。
民主主義は、主権者である私たちが政策の可否を判断できて初めて成立します。市
民の知る権利は、その不可欠の前提です。私たちは、麻生内閣のもとで成立した「公
文書等の管理に関する法律」(公文書管理法(注1)、2009年7月1日施行)におい
て、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者で
ある国民が主体的に利用し得るものである」と位置づけられていることを高く評価し
ます。
私たちは、国家が直ちには公開できない情報を有することを理解します。ただし、
政府は秘密の指定が適切であることを説明する義務を負うものと考えます。しかし本
法案には、指定の妥当性を客観的な立場から検証判断する、政府から独立した第三者
機関の設置は想定されていません。首相が第三者機関の役割を果たすことができない
ことは自明です。
国家の秘密は期限を定め、期限がきたものは、たとえ政府にとってマイナスであっ
ても、歴史の検証にゆだね、政府に説明責任を果たさせ、その後の政策に役立たせる
ため、すべて公開すべきであると考えます。
そのためには、指定解除前に関連文書が廃棄されることがないよう、保管が義務付
けられなければなりません。沖縄返還をめぐる日米密約は、文書がきちんと保管され
ず、大臣や政権の交代に際しては、口頭ですら引き継ぎが行われず、著しく国益を損
ねて今日に至っています。国家秘密の保管と例外なき開示を政府に義務づけない本法
案は、こうした恣意性を追認するものであり、とうてい容認できません。
本法案は、安全保障、外交、諜報の防止とテロ対策に関する情報など、特定秘密に
指定できる領域を広く定めています。これはただちに、裁判や国会審議の公開性や、
国会議員の国政調査権の制限を招きます。
また本法案では、研究者や政策提言組織、市民団体などの情報アクセス権が保証さ
れていません。私たちは、時の政権の都合により、情報アクセスや表現の自由への制
限が強まることを危惧します。のみならず、戦前の治安維持法の場合と同様、市民の
側の萎縮を助長し、自由な情報の交換や闊達な議論をはばかる風潮が広がる危険性が
少なくないと考えます。
人権侵害に関する政府の秘密は、秘密取扱者にむしろ通報の権利と義務がある、と
するのが世界の趨勢です。しかし本法案では、政府の違法行為にかかわる情報、政府
が違法に秘密指定している情報、あるいは公益に資すると認められるにもかかわらず
政府が秘密指定している情報などを公表した内部通報者やジャーナリストなどの保護
が保証されていないことは、きわめて問題です。
特定秘密取扱者の適性評価項目には、精神疾患・飲酒・経済状況などのほか、配偶
者とその父母の国籍や元国籍なども含まれます。約6万5千人ともいわれる当該公務
員だけでなく、官公庁と業務関係のある企業に勤める民間人まで含めて、広範な個人
情報を国家が掌握し、家族の国籍や元国籍によって本人の処遇に差をつけることは、
憲法に定められた法のもとの平等に抵触することは明らかであり、私たちは懸念を表
明せざるを得ません。
さらに本法案は、外国に特定秘密を提供できるとしています。具体的には、アメリ
カ合衆国への機密情報供与が想定されていることは明らかです。国家安全保障会議創
設や集団的自衛権容認へと向かう現政府の動きを勘案すると、この規定は、核抑止を
基本とする米国のグローバル戦略のなかにわが国を組み込むものであり、交戦権を放
棄した憲法にも、国連の場で核兵器廃絶を支持しているわが国の方針にも、もとるも
のです。
安全保障と市民の知る権利は、とくに2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、各
国がその均衡に苦慮してきました。「国家安全保障と情報への権利に関する国際原
則」(ツワネ原則)(注2)は、世界の経験と英知の結集から生まれ、かつわが国も
締結している国際人権規約にのっとったものであり、私たちはきわめて妥当であると
考えます。
とりわけ、「ツワネ原則」が秘密指定してはならない領域として、国際人権法や人
道法に違反すること、公衆衛生に関することなどを提案していることは重要です。こ
れは、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の拡散について、とくに
初期の情報開示が充分ではなかったという痛恨の経験をした私たちにとり、切実さを
もって理解できるものです。
かつて歩いた誤った道を、再び歩むことがあってはなりません。民主主義と相矛盾
する本法案を廃案としたうえで、安全保障と市民の知る権利のバランスについてさら
なる社会的な議論を深め、国会においても、性急な多数決に走ることなく、後世に悔
いを残すことのないよう、野党の提案も真摯に審議し、取り入れるべきは謙虚に取り
入れ、多くの市民が納得する方策を見出すことを、市民、政府、国会議員に呼びかけ
ます。
注1 公文書管理法憲章
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO066.html
注2 ツワネ(Tshwane)原則 70カ国以上の500人を超える人権と安全保障の専門家
の2年以上、10回以上の議論を経て、22の団体によって起草され、2013年6月12日に
発表された。ツワネは、最終会議が開かれた南アフリカ共和国の都市である。
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/statement/data/2013/tshwane.pdf
連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp
ファクス:045-891-8386
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