【力久修の呟き日記(2022.03.29)】
【力久修の呟き日記(2022.03.29)】
現場の想いを綴っているコラム「記者日記」を29日付佐賀新聞から紹介します。鹿島支局の中島幸毅記者が「ふに落ちない」という見出しで有明海再生をめぐり漁業者の想いを綴っています。以下全文です。
ふに落ちない発言だった。3月5日、有明海再生について意見交換するために佐賀県を訪れた元長崎県知事の金子原二郎農相。国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門を命じた2010年の高裁判決に言及し、「あの時、われわれ長崎県民は、最高裁の判定に従う、最高裁の決定なら開けざるを得ないと決めていた」と述べた。
高裁判決は当時の民主党政権が上告せずに確定しており、金子氏は「時の政権が断念した」と強調した。高裁であっても最高裁であっても確定判決に違いはないはず。今回の高裁の訴訟で和解に向けた協議に応じなかった国の姿勢と、金子氏の発言とが重なった。
訪問の2日後、金子氏は政界引退を表明した。ノリの不作や二枚貝の減少などを訴えた漁業者からは「何だったのか」と落胆の声が聞かれた。このような国側の対応が、漁業者の不信感を募らせてきたのだろう。
長年にわたる開門関連の訴訟は、和解による解決が望ましいとされてきた。しかし、高裁の25日の判決は和解協議入りを拒み続けた国が勝訴し、開門の確定判決を事実上無効とする判断が示された。「なぜこんなことになるのか」。やりきれなさがにじむ漁業者の声が耳に残った。
私と同じ想いをもって取材を続けている記者がいることに、宝の海を取り戻すための力になります。