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2016年参院選・テレビニュースはどう伝えたか

2016.08.25(11:17) 3838


        2016年参院選・テレビニュースはどう伝えたか
             ~憂うべき選挙報道の現状~

           2016年8月18日 放送を語る会

はじめに

 2016年参議院選挙は、与党が勝利し、いわゆる改憲勢力が3分の2を占めると
いう結果となった。歴史の岐路となったこの重大な選挙戦をテレビニュースがどのよ
うに伝えたか、放送を語る会は、NHKと在京民放4局の代表的なニュース番組をモ
ニターし、その結果を本報告にまとめた。

 当会としては、安保法案報道の検証に続き、これが18回目のモニター活動とな
る。対象としたニュース番組は次の6番組である。モニター期間は、投票日までの約
1か月間、6月13日(月)から7月10日(日)までと設定した。

○NHK「ニュース7」
○NHK「ニュースウオッチ9」
○日本テレビ「NEWS ZERO」
○テレビ朝日「報道ステーション」
○TBS「NEWS23」
○フジテレビ「みんなのニュース」

 いずれもデイリーの番組(月~金、月~土、または毎日放送)で、ウイークリーの
番組やこの期間中の特集番組等は対象としていない。したがって、本報告書の内容は
上記ニュース番組に限ってのものであることをお断りしておきたい。

 しかし、毎日のニュース番組は視聴者の生活の中に溶け込んでおり、日常的な視聴
が習慣化している。その影響力は強いと考えられる。
 当会がモニターに当って強く意識したのは、上記ニュース番組が、選挙の争点に関
して、有権者の政治的判断、政党選択に役立つような情報を多様かつ掘り下げて提示
しえたかどうか、また政党、候補者の扱いで政治的公平性が貫かれていたかどうか、
であった。

 結論的に言えば、これらの点で今回の参院選報道には大きな問題が残る。その内容
を以下の報告で述べたい
 モニターの方法は、それぞれの番組に1名から数名の担当者を決め、放送日ごとに
選挙関連内容の記録と担当者のコメントの報告を求めるというものである。その報告
をメンバー全体で共有し、本報告書を作成した。これはこれまでの当会のモニター方
法と変わりはない。

 担当メンバーは、録画した番組内容を書き起こし、録画機器のカウンターをみて放
送時間量を計算するという全くの手作業で報告を作成した。専門機関の大がかりな調
査ではないが、この間のニュース番組の基本的な傾向は明らかにできたと考える。


1、質量ともに貧弱な選挙報道

 今回の参院選報道で、モニター担当者から一斉に上がったのは「なぜこんなに選挙
報道が少ないのか」という声だった。
 本報告末尾の付表1を見ていただきたい。6月22日の公示日から19日間、番組
によっては選挙関連項目が無い放送日がかなりある。
 NHK「ニュース7」は、公示日から18回の放送のうち、実に9回、関連報道が
無い日だった。この期間、半分は選挙報道をしていないことになる。とくに投票日前
の1週間で見ると、7月5日から8日までの4日間、選挙関連ニュースは見当たらな
い。

 「ニュースウオッチ9」は投票日直前の7月7日、8日、選挙関連放送をしていな
い。日本テレビ「NEWS ZERO」は13回のうち6回は関連放送が無かった。
フジテレビ「みんなのニュース」は、18回の放送中選挙報道があったのはわずか6
回で、3分の1にとどまっている。

 これらに比べ、この期間、「報道ステーション」は関連項目が無かったのは1回に
とどまり、「NEWS23」も2回だけである。この二つの番組は7月に入ってから
は選挙報道を休まず続けている。
 ここからは、「みんなのニュース」「NEWS ZERO」は論外として、選挙終
盤でNHKの2番組に関連報道のない日が続いたことは疑問であり、公共放送の任務
から言って批判は免れない。

 回数だけでなく、各回の時間量も問題であった。短い時間に9党の政策や主張を盛
り込むことから、断片的な主張が羅列されるだけのケースが数多くみられた。

 典型的な例は、7月3日の「ニュース7」で、各党党首の街頭演説の秒数と主張し
たテーマはつぎのようなものだった。
 安倍首相「テロから内外の日本人の命を守るために万全を尽くす」(42秒)、民
進党岡田代表「子供の6人に1人が貧困。政策が間違っているからこうなる」(30
秒)、公明党山口代表「政権が安定しているから政治が進む。民進・共産に将来の政
治を任せるわけにはいかない」(24秒)共産党志位委員長「自衛隊の合憲・違憲が
問われているのではない。自衛隊を海外の戦争に派遣するのがいいかどうかだ」
(22秒)、おおさか維新の会松井代表「大阪でやっている改革を全国に広げる」
(20秒)、社民党吉田党首「安倍政治の暴走を止める選挙。改憲勢力に3分の2を
与えない」(18秒)、生活の党小沢代表「安倍内閣成立以来、国民の実質所得は減
少。これを変えないといけない」(16秒)、日本のこころ中山代表「所得が増える
経済政策を。公共事業を全国で広げる」(15秒)、新党改革荒井代表「何でも反対
の野党と違う。威張る与党に歯止めをかける新党改革」(10秒)

 「みんなのニュース」6月25日は、公示後最初の週末の各党党首の街頭演説を並
べている。
 時間量は、自民安倍23秒、公明山口20秒、民進岡田20秒、共産志位20秒、
社民吉田14秒、生活小沢19秒、改革荒井15秒、維新松井15秒、こころ中山
17秒、となっていた。

 このように、ひとり10秒とか15秒とかの主張を並べる方法は、選挙戦の雰囲気
を象徴的に伝える演出としてはないわけではない。
 しかし、この種の主張の羅列はこの二つの放送だけではない。選挙報道ではいわば
定式化されている。はたしてこれで有権者の判断に役立つ選挙報道といえるだろう
か。

 デイリーニュースでは時間が十分とれない、という局側の釈明も予想される。たし
かにデイリーニュースの宿命として、その日に発生した事件や、災害をまず伝えなけ
ればならない、という事情がある。しかし、さして重要と思われないような項目を選
挙報道よりも長く伝えるという例は少なくないのである。
 選挙報道の拡充については最終章で提起したい。

2、争点の伝え方──改憲問題

 今回の選挙で、改憲を目指す勢力が3分の2以上を占めれば、戦後初めて衆参両院
で改憲勢力が3分の2を超え、憲法改定の動きが一気に加速することが予想された。

 民進党、共産党など野党4党は、安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻す、という
基本的合意に基づき、全国32の1人区の選挙区で野党統一候補を実現させた。戦後
例をみない選挙の取り組みであり、その共通政策には憲法改定に反対する、という確
認が含まれていた。

 こうしたことからみても、選挙の重大な争点が「憲法改正」であることは明白だっ
た。しかし、自民・公明両党は、改憲問題は争点ではない、と主張、街頭演説でも全
く触れなかった。
 この「改憲隠し」にたいして、テレビニュースはどのような姿勢で臨んだのだろう
か。

 各局の争点の設定の内容を見てみよう。
 「ニュースウオッチ9」は、6月27日に「経済対策・アベノミクス」28日に
「社会保障」29日に「安全保障と憲法」という3つの争点をあげた。
 「報道ステーション」は、6月20日「憲法」23日「社会保障と財源」27日
「イギリスEU離脱への対応」28日「低年金・無年金問題」7月5日「経済、アベ
ノミクス」7月6日「安保」と、6つの争点を設定した。
 「NEWS23」は、6月29日に「憲法」7月7日に「経済」、「NEWS Z
ERO」は7月1日に「アベノミクス」8日に「憲法」を取り上げている。
 「ニュース7」では、「改憲問題」を争点と設定した企画はなかった。また「みん
なのニュース」はアベノミクスが選挙の争点という姿勢が基本で、改憲問題を独自に
扱っていない。
 とくに「ニュース7」は6月22日、公示日の放送で冒頭、武田キャスターが「安
倍政権の経済政策、アベノミクスなどが争点になる第24回参議院選挙」と述べた。
これは政権の主張と重なる表現で、この番組では争点としての改憲問題が意識されて
いないことを示していた。

 これらの争点設定を見る限り、4つの番組が自公の「改憲隠し」には従わず、改憲
問題を一応の争点として掲げていたと言える。

 以下、改憲問題を扱った番組の内容を振り返ってみる。
 
 「報道ステーション」は6月20日、参院選の争点シリーズのトップに「憲法改
正」を挙げ、10分近くで報じた。番組はまず「憲法改正」が投票先を決める決め手
になるかという問いに、51%が「そう思う」と答え、「思わない」33%を上回っ
たという世論調査の結果を伝え、「今日は『憲法改正』について考える、とした。

 続いて、1月の記者会見での首相の「憲法改正については参院選でしっかり訴えて
まいります」という発言のVTRを挿入、ナレーションで「40回の街頭演説で憲法
改正について全く触れていない」と指摘した。前言を平然と翻す首相の態度を端的に
示す編集だった。

 このあと、自民党草案の「日本国は天皇を戴く国家とする」、という前文、「国防
軍の創設」「国旗、国歌の尊重、家族の助け合い、憲法尊重等々、国民の義務の規
定」の増加など、草案の重要部分を画面上に示した上で、各党の主張を整理、紹介し
た。

 最後に後藤謙次コメンテーターが、「安倍首相は選挙後憲法調査会を動かしてい
く、と言った。本音が出てきた。どんどん憲法問題の議論を深めていきたい」と指
摘、富川キャスターは「ここ最近の選挙のあとに、秘密保護法や安保法制とか、あれ
っ国民の信を問うてないじゃないか、ということもありましたからね。ちゃんと争点
にしてくれればね」などと述べている。改憲を争点にしない傾向を暗に批判したと受
け取れるコメントだった。

 このほか「報道ステーション」は、6月21日のスタジオ党首討論で、冒頭から
20分近く憲法を争点にした。7月7日は東京選挙区の候補に改憲問題にしぼってイ
ンタビューしている。
 自民党の改憲草案にまで踏み込むニュースが少ないなかで、こうした「報道ステー
ション」の姿勢は評価に値する。

 「ニュースウオッチ9」は、6月29日、参院選の争点のひとつとして「安全保障
と憲法」をあげ、全体で11分、うち改憲については7分弱で伝えた。
 憲法記念日の改憲派、護憲派の集会のVTRのあと、各党の主張を記者が整理して
約5分で解説している。
 キャスターが「私たちは今回の選挙で、憲法についても大きな選択を問われている
ということか?」と尋ねたのに対し、記者が「国の大きな方向性を決めるという意味
では、子や孫の世代に深く関わる問題といえる」と答えている。このコメントは評価
できるが、それほどの問題を、各党の主張を5分間羅列して終わるだけの放送ではあ
まりに簡略に過ぎた。

 このコーナーでは、自民党の改憲草案の内容は紹介されていない。また、「報道ス
テーション」で紹介された安倍首相の「……参院選でしっかり訴えてまいります」と
いう記者会見の発言は組み込まれていない。この発言を紹介することは選挙中の安倍
首相の姿勢を批判することになる。避けたのではないかという疑いを持たざるを得な
い。自民党が目指す改憲の方向と具体的な内容を伝えないことと併せて、「ニュース
ウオッチ9」の「改憲」の争点解説は腰の引けたものとなっていた。

 「NEWS23」は6月29日、8分程度で憲法問題を取り上げた。憲法を学ぶ集
会での「緊急事態条項」に関する講師の「これを入れられたら終わり、というくらい
恐ろしいもの。憲法改正は隠されたメインテーマ」という言葉を紹介した。
 メインキャスター星浩氏は、「星浩の考えるキッカケ」のコーナーで、国民の憲法
尊重義務を定めた自民党改憲草案と現憲法を比較し、立憲主義について「与野党でよ
く検討してほしい」と提起した。
 これらの指摘は意味があるが、肝心の緊急事態条項の内容は示されず、9条の改
変、国防軍の創設、表現の自由の制限、といった自民党改憲草案の重要な内容は伝え
られていない。安保法案に批判的姿勢を貫いた「NEWS23」としては、憲法問題
の放送がこの程度で1回しかない、というのは前年度までの「NEWS23」からの
後退というべきである。

 「NEWS ZERO」は、投票日直前7月8日、ようやく憲法問題を取り上げ
た。番組では、各党の「憲法改正」のスタンスを比較したあと、村尾信尚キャスター
が「仮に”改憲勢力”が3分の2をとって、国会で本格的に議論が始まっても、この
参院選で有権者の考えを具体的に聞いていない以上、この議論には限界がある」と指
摘した。
 このコメントはキャスターの一定の良識を示したものといえる。しかし、6分間の
放送はあまりに短く、各政党の主張を並べるだけにとどまり、改憲内容の検討までに
は至っていない。

 「憲法改正」に関する選挙報道で最大の弱点は、この問題が一般的な「憲法改正」
という用語で伝えられ、その具体的内容が追及されなかったことである。
 強力な改憲勢力である自民党は、すでに憲法改正草案を発表しており、その内容は
明確である。改憲派の中で、自民党の主張は、改憲を推進する現実的な力を持ったも
のとして他党とは比較にならない重さがある。争点として取り上げるのであれば、自
民党が憲法の何を改定するのかの情報が報道の核心でなければならなかった。

 「憲法改正」という一般的な争点があるのではない。最大与党の自民党が何を変え
ようとしているかが争点だったはずである。しかし、自民党改憲の具体的な内容をあ
げて争点として提示する番組は「報道ステーション」以外にはほとんどなかった。情
報量の不足と相まって、この点が「改憲問題」の報道の基本的な問題点であった。

 もう一つの弱点は、これほどの大きな争点でありながら、「報道ステーション」以
外の番組は、改憲問題にかける時間量が6~8分程度で、内容的に不十分だったこと
である。
 NHKは、「ニュース7」では扱わず、「ニュースウオッチ9」では実質7分程度
だった。このNHKニュース2番組の姿勢には大きな疑問が残る。

 なお「改憲」という争点に関連して、32の選挙区で成立した野党共闘の評価につ
いては鋭い対立がみられた。自公は「野党共闘は政策が違う政党の野合」と非難し、
野党4党側は「安保法廃止、立憲主義回復」という大義で合意した共闘だと反論し
た。
 報道は、野党共闘に注目して、1人区の取材も行い、党首討論や街頭演説で対立す
る主張を伝えた。しかし、全体を通じてみると、有権者がこの対立について判断する
ための情報が十分に伝えられたとは言えない。
 この共闘には、政党だけではなく、安保法に反対した全国的な市民運動の関わりが
大きかったが、こうした市民の動きや、野党4党と市民連合が具体的な政策で合意し
ていたことなど、重要な事実がほとんど伝えられなかった。争点の背景に何があるか
を伝えるという点で問題を残した経過と言える。

======================================

*報告は下記へと続きます。

3、争点の伝え方──アベノミクス、社会保障ほか
4、選挙「情勢報道」の偏重 「18歳選挙権」関連報道の問題
5、政治的公平性への疑い──大政党に有利な扱い
6、選挙報道に望まれること──抜本的に考え直すべき
番組編成付表1、モニター番組の選挙関連項目の有無と時間量、内容一覧付表
2、モニター番組選挙関連項目総放送時間 
【資料】モニター担当者の番組評価と批判

ぜひ全文をご覧ください。
下記URLをクリックすると、報告PDFファイルにアクセスできます。

http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/160818monita_saninsen.pdf
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