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◇ 差別意識と政治の共鳴は戦慄的事態を生む ◇

2016.09.27(18:45) 3984

<JCJふらっしゅ 2016/09/27 2590号より>
       ◇ 差別意識と政治の共鳴は戦慄的事態を生む ◇

                           吉原 功

 信濃毎日新聞8月22日付に次のような投書が掲載された。
 「先日相模原市で痛ましい事件がありましたが、『誰しも命の重さは同じ』といっ
た報道がありました。でも私は聞いてみたい。日常生活の中で障害者を差別したこと
はないですか。職場で邪魔だと思ったことはないですか。国の政治のトップが『一億
総活躍』を掲げる社会全体の目が厳しい気がするのは、私だけでしょうか」。この詰
問に私ははっとして戸惑う。「差別したことも邪魔だと思ったこともない」と心底い
えない自分を見出すからだ。

 同紙には切実な声が相次いで寄せられているようで、9月11日にも、役場の若い
男性に「障害児が2人いると手当がたくさんもらえていいですね」などといわれた体
験を綴った母親の投書が掲載されている。 障害児をもつ家族がいかに深く傷つけら
れながら日常生活を送らざるを得ないかが読み取れる。発話者の多くはそのことに気
付かないのだ。それだけ差別意識が普遍的に潜在しているということである。

 7月26日未明、相模原市の知的障害者施設で入所者19名が殺害された事件は、
このような潜在差別意識が先鋭化したものと言えよう。それだけではない。事件を特
集している雑誌『創』10月号はこれが単なる殺人事件ではなく、現代社会の深刻な
深層の一部が表出した事件であることを明らかにしている。特に、日本障害者協議会
代表藤井克徳さんの「『T4作戦』や優生思想がこんな形で現れたことに驚いた」と
いう報告記事は衝撃的だ。

 「T4作戦」とはヒトラーの命令によって実施された「価値なき生命の抹殺を容認
する作戦」でこれにより20万人以上の障害者が殺害され、ホロコーストに直結した
ものという。その根底にあったのが徹底した優生思想と民族浄化思想で、1920年
代初頭からドイツ社会で語られており、それをヒトラーは利用したとも指摘される。

 ホロコーストについてはつとに「国をあげての総括と保障」が行われたが、「T4
作戦」についての謝罪は2010年を待たなければならなかった。翻って日本はどう
であろうか。藤井さんは、都知事時代の石原慎太郎が入所施設を見学した後「こうい
う人に人格ってあるのかね」と言ったり、昨年11月に茨城県教育委員会が「生まれ
る前に障害の有無がわからないのか」という事例を想起する。首相を先頭に戦前回帰
志向の面々が政府を構成している。

 「強いものが幅をきかせるのと並行して人権意識が薄らいでいる。そういう日本社
会を覆う流れのなかで起こったのが今回の事件」と藤井さんは指摘する。人権意識の
ない政治指導者と市井に広がる潜在的差別意識が共鳴することにより、戦慄的な事態
になりかねない。
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